"Saber Rider and the Star Sheriffs" って?

アメリカから世界へ

星銃士ビスマルクは、日本以外ではすべてアメリカ改変版・Saber Rider the Star Sheriffs (セイバー・ライダー・アンド・ザ・スターシェリフス)を元にして放送されている。(中国・台湾・韓国を含むアジア圏も例外ではない)

著作権者が違う別作品

ぴえろ(当時はNTVも)から星銃士ビスマルクの作品権利を86年に買い取り、Saber Rider the Star Sheriffs として別作品へと仕上げたのは、アメリカの WORLD EVENTS PRODUCTIONS (略称:WEP)である。

WEPでは日本版から設定を大幅に変更したのに伴い、日本版全51話のうち、修正が困難な5話分(20・23・30・36・42)をカットし、エピソード順をかなり入れ替えた上、新たに6話分を新規製作して全52話にしている。(正確には個々のシーンでかなり細かい調整をしているがここでは省略。)主題歌およびBGM全ても新規製作した。(2005/07/01 修正)

なお、新規挿入分作画には、ディーヴァ(カナメプロが社名変更)が原画を担当したものがある。(情報元:ヤフーオークションでの出品)

WEPはビスマルク以前に、東映の『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』をすでに Voltron (ヴォルトロン)としてアメリカに送り出している。

84年9-11月にゴライオン全52話にダイラガーXVから9話分組み込んで全61話の第一部を放送した後、84年12月から85年3月にダイラガーXVの残り全43話分を第二部として放送した。作中で両者の一部シーンを挿入したり、86年に東映に発注して作られたTVスペシャル版では両ロボの競演もある。(双葉社『スーパーロボットカルトクイズ』、および海外Voltronサイトより)

ゴライオンメインの第一部は、Defender of the Universe (ディフェンダー・オブ・ザ・ユニバース)、ダイラガーメインの第二部は Defender of the Near Universe (ディフェンダー・オブ・ザ・ニア・ユニバース)と題され、タイトルで防衛地域の違いを表している。

しかし、原作からの区切りとして、ゴライオンパートを Lion Voltron (ライオン・ヴォルトロン)あるいは Lion Force (ライオン・フォース)、ダイラガーパートを Vehicle Voltron (ビークル・ヴォルトロン)あるいは Vehicle Force (ビークル・フォース)と呼ぶが、人気はゴライオンパートの方が高い。

そのためWEPではゴライオンのみの続編で、韓国作画となった第2シリーズ全20話(制作を依頼された東映が丸投げしたため)と、3DCGによる第3シリーズの The Third Dimension (ザ・サード・ディメンション)を制作している。

アメリカ輸出に好条件

星銃士ビスマルクがアメリカを通して海外に進出できたのには、複数の好条件があった。

まずは、アメリカでの子供向けアニメのレーティングが、実弾による攻撃や、流血シーンを規制しているため、日本版のレイガンによる攻撃、およびデスキュラ星人が死ぬと消滅するシーンに、設定の改変を加えて放送可能となった。(しかし、わずかではあるが、修正し切れなかったシーンも存在する)

そして、西部劇をベースとしている作風が、アメリカで受け入れられると判断されたようだ。

DVD解説書で案納総監督自ら、キャラクターを国際性豊かにしたのは作品を海外でも売れるように、と回答していたが、それだけでなく、開始当初の26話完結予定を超えた全51話となったことにより、日本から輸入したロボットアニメの話数(複数作品との混合も含め)が、平日の子供向けアニメの放送では、月-金で13週放送させるため、65話は必要とされるアメリカにおいて、単独作品でどうにか放送させられる話数を確保することも可能となった。 (2004/11/28 修正) (情報元:『スーパーロボット大鑑 Ver.2004』 メディアワークス p125)

Saber Rider とビスマルクとの違い

太陽系外を舞台に

星銃士ビスマルクの舞台は21世紀のガニメデおよび太陽系だが、海外版 Saber Rider では、銀河系に進出した人類の移住惑星群: New Frontier (ニュー・フロンティア)を舞台とした、21世紀末か22世紀初頭とされる時代の物語である。

外観上では、惑星 Yuma (ユーマ)がガニメデ、惑星 Alamo (アラモ)が地球、Alamo Moon (アラモ・ムーン:アラモの衛星)が月と対応しているが、日本版での惑星・衛星上での個々の土地とは必ずしも一致していない。

日本版ではガニメデ東部地区の支配者であるドメス将軍が、海外版では惑星アラモ の Kingdom of Jarr (ジャール王国)の王: King Jarret (キング・ジャレット)となっている。なお、レアゴー隊長は彼の息子 Prince Roland (プリンス・ローランド)である。

タイトルからして…

海外版最大の変更点として、リチャードが Star Sherrifs (スターシェリフス)屈指のエリート・ Saber Rider (セイバー・ライダー)として、主人公およびビスマルク・チームにあたる Ramrod Unit (ラムロッド・ユニット)のリーダーを務めている。しかし作中では、チーム名もスターシェリフスと呼ばれることが多い。

マリアンが April Eagle (エイプリル・イーグル)として初めからセイバーのサポートを行い、彼に好意を持っていることも日本版とはかなり違う。

この二人は Cavalry Command (キャバルリー・コマンド)という、人類側の防衛組織に属しており、エイプリルの父親、Commander Eagle (コマンダー・イーグル)は Western Sector of Cavalry Command (キャバルリー・コマンド西部管轄)の責任者となっている。日本版とはルヴェール博士が彼に、西部管轄本部は地球連邦政府のそれが相当する。

第1話冒頭でのエイプリルの発言が、「Ramrod (ラムロッド:海外版のビスマルク)の情報が、敵である Outrider (アウトライダー)のスパイ・Vanquo (ヴァンクォー:日本版ではホテルでビルに倒されるデスキュラ)に漏れた」で、Fireball (ファイアーボール)となった進児には一切触れられていない。何故なら彼は経歴がレーサーだけで、エイプリルと彼女の父とは全く面識がないからである。

ビルは、サーカスの曲芸飛行出身の賞金稼ぎ Colt (コルト)になるが、ヴァンクォーを賞金首として追う最中に ファイアーボールと遭遇する。(日本版では進児が賞金首で、スペースインパルス隊のチーフパイロットでもあったビルは彼と共にビスマルク・チームに選ばれていた。)

身の安全を図ってホテルから逃げたファイアーボールは、立ち往生したところをコルトに助けられ、行く手にラムロッドを発見すると、初対面のエイプリルに頼み込まれて操縦を引き受けることになる。ラムロッドの操縦を成功させた彼らを、セイバーは特例でスターシェリフに任命した…、とこのようにセイバーが回想するのが、海外版第1話の内容である。

海外版では最初から…

そして、日本版シリーズ後半最強の敵・ペリオスは、地球人の Jesse Blue (ジェシー・ブルー)として大幅に設定が変わり、ストーリー序盤のアメリカ版新規挿入話で、スターシェリフの候補生として登場する。そこでのエピソードは、以下のような内容である。

(2004/09/06) JJ様から香月様サイトで得た情報を受け、修正。Thank you, JJ!

アウトライダーの襲撃を退けたセイバーら4人は、惑星アラモにある、スターシェリフの養成所であるアカデミーに赴き、所長のホワイトホーク(アメリカ版オリジナルキャラ)に挨拶する。コルトは銃の腕前を披露するも、安易に仲間に銃を向けた候補生に対して、厳しく叱責する。

アカデミーの候補生で優等生でもあるジェシーは、大男のボブ(アメリカ版オリジナルキャラ)を軽々と投げ飛ばしたエイプリルに一目ぼれし、彼女の相手をする。エイプリルはジェシーには敵う事が出来なかった。

しかし、エイプリルがウルフ(アメリカ版オリジナルの擬人化狼キャラ)率いる強盗の人質になった時、自分ではなくセイバーが救出に成功したため、彼に嫉妬心を抱くようになる。(以上、アメリカ版2話 "Cavalry Command"

ジェシーはパーティー会場で二人きりになったときにエイプリルに告白したが、壁際に詰め寄った末、彼女に投げ飛ばされた一件がスキャンダルとなり、スターシェリフのプログラムから外されてしまう。アカデミーを去ろうとするジェシーに、エイプリルは謝罪さえすればプログラム復帰への恩赦は出される、と告げるが、彼女の愛を得られないと知った彼は去っていく。

道を踏み外したジェシーはウルフの一味に加わり、キャバルリー・コマンドに回収された、爆弾を積んだアウトライダーの宇宙船を奪おうとするが、ウルフ以外の強盗たちはあっさり捕まった。ジェシーは峡谷でセイバーと相対し、横穴を抜けようとするが、宇宙船が引っかかってしまい、墜落する。

それでも無事だったジェシーはラムロッドに爆弾を仕掛けるが、エイプリルがラムロッドに乗りこんでしまう。エイプリルを引きとめようとしたジェシーの声は届かず、発進してしまったラムロッドを追うため、ウルフから宇宙船を奪うが、セイバーに墜落させられてしまう。なおも無事なジェシーは、セイバーに爆弾について教えるが、間に合わずに爆発してしまう。セイバーはそれでも無事ラムロッドを着陸させることに成功する。この一件で完全にお尋ね者となってしまったジェシーは、自分の手配書を破り捨て、上空を飛ぶラムロッドを見つめ、去っていく。(以上、アメリカ版3話 "Jesse's Revenge"

(その後、アウトライダーに偶然遭遇した末、寝返ることになる。)

こうして後に、日本版31話にあたるエピソードで、ジェシーはアウトライダーの一員として再び現れることになる。

日本版では、マリアンは進児にのみ好意を示し、デスキュラであるペリオスがかかわった異性は地球人のチルカだけである。しかし海外版ではエイプリルをめぐる恋愛模様が複雑になっているため、日本版でビルがペリオスとのライバル関係になるのに対し、ジェシーはセイバーだけでなく、エイプリルと急接近するファイアーボールに対してさらに深い憎悪を示すことになる。

とにかく『人死に』を省く

日本版ビスマルクでは、デスキュラ星人は母星を失った侵略者で、死亡シーンは消滅という形を取っている。(デスキュラに対しては、他にも血液が緑色であるなど、戦闘シーンの残虐性を低める設定が行われた。)

しかしWEPでは、Saber Rider においてさらに刺激を弱めるために、デスキュラにあたるアウトライダーを、Vaper Zone(ヴァイパー・ゾーン)という異次元からの存在に変更した。彼らへの攻撃は、異次元に戻すためであり、殺さない。そのため海外版のエイプリルは、日本版のマリアンと違い、自らの銃でアウトライダーをためらいなく撃っている。

日本版からアップでの死亡シーンが省けない地球人キャラでも、海外版では死なず、『重傷を負って意識を失った』だけ、また、ファイアーボールの父(海外版の進児郎)は、過去の戦争で Nemesis (ネメシス:海外版のヒューザー)の戦艦爆発に巻き込まれ、異次元へ飛ばされたために行方不明となっている。

しかし、死亡シーンの修正が不可能な、日本版20話『危険な来訪者』30話『戦え! 平和のために』36話『ジュノー星救出作戦』、以上は海外版では省かれている。(注:ただし海外版では日本版43話相当話に、日本版30話のキャサリン登場から自由アステロイド軍基地でのシーンを挿入している)

お酒はダメ!

飲酒シーンに対してもアメリカの子供向けアニメでは規制が厳しく、成人キャラでも酒を飲んではいけない。

日本版4話では、酒場の乱闘シーンと、用心棒のボブが缶ビールを飲むシーンが登場するが、海外版では酒場(サロン)をコーヒーショップに、缶ビールはルートビアーと解釈を変えている。

そのため、日本版23話『キャプテン・ホリデー』は、タイトルを張った本人がワインを飲んで泥酔したため、再登場する42話『大要塞接近!』(移動衛星襲撃シーンも検閲対象だったが)ともどもカットされている。

参考サイト

アメリカでのレーティング

海外共同制作に実績のあるテレコムが、具体的な表現規制について紹介していた。

(2005/07/01) 現在は『アメリカでのお仕事』コンテンツは削除されている。

主なものとしては、建物の中から外へガラス窓を破ってはいけない(1話のビルは外から中へ破っているのでセーフ)、女性の胸の谷間を出してはいけない(日本版DVD4巻のマリアンはアウト)、レイガン・ビームガンはよくても実弾銃はダメ、大人でも飲酒はダメなど。

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LastUpdate 2005/07/01
Exposure 2004/01/30